2012年8月アーカイブ

明日は七宝会普及公演でございます。


昼の部、夜の部ともに狂言は野村萬斎の「舟ふな」、能は辰巳満次郎の「船弁慶」です。

とくに今回の船弁慶は「後之出留之伝(のちので とめのでん)の小書(特殊演出)で、

この小書は宝生流のみにある演出で、音楽的にも大変優れた作りであり、

宝生流でも大事に扱われるものです。


前半の静御前が義経との別れを前に最後の舞を舞う場面、

中の舞(序の舞の場合もあり)の最中に義経に向いて袖を濡らすシーン、

また、後半は小書の名前にもあるように登場と退場が特徴あり、

どちらも幕から目が離せません。


折角の演出なのに、幕をご覧になってらっしゃらない方も多く残念、

明日の解説の際には、しっかりお伝えせねば・・・。


間狂言として難しい習い物で「お披き物」でもある「船頭」も、萬斎が勤めてくれます。


とにかく、船弁慶はみどころマンサイ。


仕舞も「安宅」「八島」と今回は大河ドラマ「清盛」をちょっぴり意識しております。


夜の部はまだ残席がございます。 是非お出掛けくださいませ!


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今年も夏休みこども仕舞教室が開催され、

小学1年生から中学3年生まで26人の参加者が宝生能楽堂に通い、

我々能楽師6人で講師を務め、24日に発表会が開催されました。


今回で7年目、リピーターも多く、今年で6年連続の子も3名、嬉しく有難いことです。


相対的に「大過無く」、普通に素晴らしい出来のこどもも、奇跡的に素晴らしい出来の子も、

なんとか切り抜けた子どももあり。

「稽古した分、舞台で出来る。稽古は裏切らないよ」と言ってきましたので、

それぞれ自分で出来栄えや今までの頑張り具合は身に沁みているでしょう。


純粋な子ども達を指導するのは、本当に嬉しいものです。

掛け替えの無い、大事な子たち、愛情をもって、厳しく・・・。


リハーサル風景
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お陰様にて、21日のミルトン国際シンポジウム東京大会記念「新作能 散尊」は

盛況に、無事に終わりました。


新作の苦しみ、危うさ、楽しさ、恐ろしさ、様々を今回も勉強しました。

また、初めて新作に参加した若手達も、必ずこの経験を活かしてもらえると思います。


新作の特別な過程や不安定さや戸惑いがあったにせよ、

自己の総力を用いて勤めることは古典も同じこと、

当日の楽師達は気が揃い、充実しておりました。


提供する立場でも、ご覧いただくお立場でも、これは当たり前の話、

しかし40歳前後はそれを、ほんの少し忘れかける年代かと、

いや正確に言うとわざわざ意識しなくなる年代かと、我が身にも照らし、

改めてひとつの舞台を全員でつくり上げる大切さ、楽しさを、思ってくれたかと信じたいところです。


新作と言うのは江戸時代以前は当たり前に行われていた訳です。

私は新作の専門家では勿論ありませんが、

新作を勤めるには、能の理論的な事、あらゆる約束事、観客からどのように見えるか、

面・装束の合わし方、囃子事の約束、全体の構成、音楽的な組み合わせの可能性を求め、

流儀のみの演出にこだわらず、しかし、流儀の目指す型を基本に・・・

などと、きりもない道程あり、能というものを改めて深く考えることになります。


これが古典をやる上でも、大変な勉強になります。


新作をやらずとも、これらの勉強はできていなければなりませんが、

実際に節を付け、型をこしらえ、囃子事を組み立て、演出まですると、相当な勉強になります。


当日の舞台環境、観客層、催しの趣旨、出演メンバーの特徴まで考慮して

つくり上げ、調和を目指します。

普段の日々の舞台でここまでやるのは、なかなか難しくとも、

役者の当然の努力と思い、近づけねばならないと強く再認識いたしました次第です。


そもそもこの能の構想を40年前から抱き、実現なさった

シンポジウムオーガザイナー佐野弘子青山学院大学教授はじめ、

命である台本を見事にお作り頂いた高橋睦郎先生、プロデュースの土屋圭一郎先生、

素晴らしい出演の面々、ワキのミルトンと共に能を観ていただいたお客様に

深く深く感謝申し上げます。


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昨年震災で本年に延期になった国際ミルトンシンポジウム東京大会は

第10回の記念大会となり、さらには大会オーガナイザーの佐野弘子青山学院大学教授の

長年の夢であったミルトン作「闘士サムソン」の能化も実現、

高橋睦郎氏による作品は、素晴らしい出来栄えです。


当初、流石に難しい言葉を御使いになるので、やや抵抗を感じておりましたが、

作り込み、謡い込むうちに、納得していくのでありました。


新作というものは、古典を専門とする我々にとって、一種のルールをもって、

つまりそれを行うべき意義の検証と節度と研究努力によって、

さらに流儀として引き受けるのでなくとも流儀への届け出など、

いくつかの筋を通したうえで勤めるべきものと考えております。


次には作品の深い理解と背景の勉強を重ねて、作品の最大の理解者と成り、

メンバーに解説しながら造り上げて行きます。


能には無いことをせず、しかし能の可能性全てを利用し、

難産を克服して参ります。


今回は旧約聖書、大詩人ミルトン、という壮大なテーマを、

能の力でいかに包み、表現できるか、しかも前後シテもミルトンも盲目、

手強い役でございます。

能に於いても盲目の役は、相当に位の重いもの、新作でなければ「待った!」が

かかりそうな・・・


己の勉強として勤めたいと思います。


装束合せも大変ながら楽しいもの、能面は新作2面を使用します。

お陰さまで完売いたしました。

評判良ければ、ロンドン公演あるかも・・・。


写真は後シテのサムソン着用「散尊」と後ツレデリラ使用の「蛾媚」、

藤原千沙氏作です。

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暑中お見舞い申し上げます。

オリンピック、開会前からサーカー予選で幸先よくスタート、

毎日眠る時間が更に・・・。


国民として、シッカリ応援致します!


さて、熱帯夜に熱い応援の日々、

薪能シーズンも到来でございます。

7月から始まったシーズン、早いものでもう8月、

毎年8月1日・2日はMOA美術館のムア広場で、海を背景に薪能が

開催されます。

昨年は震災の影響で、節電のためもあり(名物エスカレータ起動が困難)、

開催が本年に延期されました。

同じ内容で本日・明日と開催されます。


明日は宝生番、

能「鶴亀」曲入 シテ小倉敏克 ワキ森 常好  鶴 水上 達   亀 和久凛太郎

狂言「千鳥」 大蔵弥太郎

能「黒塚」白頭 シテ辰巳満次郎  ワキ森 常好 

笛 一噌隆之  小鼓 大倉源次郎  大鼓 原岡一之  太鼓 観世元伯


入場無料(美術館入館料は有料)ですので、是非お越し下さいませ!