2014年4月アーカイブ

ゴールデンウイークに突入しておりますが、

皆様は如何お過ごしでしょうか?

長い方は11連休を楽しまれる方もあるとか、それだけ休暇を満喫するにも

ご苦労がお有りかと・・・。


私共も春の「能繁期」に突入でございますが、

私も彼方此方の会にお手伝いに参上もし、又、5月に入りますと

能を色々勤めさせていただきます。


5月3日 みろく能 「難 波」 綾部長生殿能舞台

5月5日 五月能 「俊 寛」 豊田能楽堂

5月16日 興福寺薪御能 「清 経」 興福寺般若芝跡

5月25日 満次郎の会大阪公演 「隅田川」 大阪能楽会館


宝生流定期公演「月並能」「五雲会」、MOA美術館能楽堂定期能、

九州、京都、天橋立・・・、

その他にも27日に大槻能楽堂改築30年記念乱能にもお邪魔します。


ヒノキ花粉で、くしゃみをしている場合では御座いません。

皆様もお元気でお過ごし下さいませ。



葉桜になりても、この週末は「この春ばかりの花見よ」とばかりに、

桜花を惜しむ方々もありましょうし、

或いは「咲きも残らず散りも始めず」とばかりの、今を盛りと咲く地域もありましょう。


ソメイヨシノのみならず枝垂桜、八重桜、薄くも濃くも花の春。


私のような花粉症患者は、花見も出来ぬ、無粋者。

いや、ガラス越しに風情を楽しむくらいは・・・。


桜の咲く頃は、出会いもあり別れもあり、出発もあり終点もあり?

美しく、目出度く、儚く・・・

しかし、春さえあらば、又、花も咲かん。

春は心にあり! と生きて行きたいもので御座います。


さて、明日は正午より宝生会主催「月並能」、

宝生会主催公演では年に1度のお役を賜っておりますが、

難曲、「桜川」を勤めさせていただきます。


所謂、「狂女物」と申します曲柄、物狂いとなった母が我が子を探し求める物語り、

パフォーマンスとしての「狂い」は我が子を探す情報収集の手段でもあり、

見物人と問答をして、時には悲しく、或いは狂おしく、

芸を織り交ぜ、風流心や教養を見せ、楽しませるのです。


桜子と言う少年、母親があまりに惨めな暮らしをするのに見かねて、

我が身を人商人に売り、その身代金で良い暮らしを...と、遥々常陸まで売られて行きます。

 

息子からの手紙でそれを知った母親は、

物狂いとなって筑紫日向(宮崎)から常陸(茨城県)まで我が子を追います。


普段は狂女の持ち物は「狂い笹」ですが、この曲は「すくい網」。

美しいすくい網を持って、桜川に散り浮く桜花を、我が子にかけてすくい舞う物狂い。


ついに常陸の国、桜川と言うところで磯辺寺に身を置く桜子と廻り合い、

やがて故郷へ共に帰って行きます。


例によって、舞台には桜の花は全く存在しません。

ご覧になる方が、桜の花を、桜花の散り浮く桜川を創り出して頂けますように。


ところで、この桜子の子役は一言の台詞もなく、1時間すわりっぱなし、

最後の5分間のみ立ち上がれるという、苦しみの役で御座います。

 

我慢は宿命の修行であり、 健気さは能の演出でもあり。



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新聞報道にもありましたので、ご存知の方もあるでしょう。

女流能楽師随一と言われた、倉本雅さんが3月24日未明に自宅で急逝なさいました。


直前までお弟子の稽古、全くお元気であり、突然のことでありました。

私も直ぐに神戸に駆けつけましたが、未だにピンと来ません。


今月には恒例の「梗風会」と言う、師の同門会があり、

毎年皆がお世話になる催しで、楽しみにしておりました。

来月には私の「満次郎の会」大阪公演にもご出演いただくことになっておりました。

まことに、残念で仕方ありません。


芸に厳しく、人に優しい、そんな方でした。

宝生の重厚な謡を正確に謡える、数少ない女流能楽師でした。

流儀内外にも認められていたのは、およそ彼女1人でありましょう。


10歳にして祖父辰巳孝一郎に師事し、翌年に能を舞い、人々を驚かせ、

先々々代宗家宝生九郎師・亡父辰巳孝の厳しい稽古に鍛えられ、

ついには皆の目標となられました。

晩年は膝を傷められ、座す事思うに任せないこともあり、

「早く辞めたい」とおっしゃるのを、なんとか説得して無理を強いてきたことを

申し訳なく思っております。


落胆この上なき関係各位でありましたが、

それぞれが、これでは故人に面目ないと思い直し、

梗風会もなんとか恩返し、供養のために私どもが補佐して、開催することとなりました。


また、私の会には仕舞「網之段」でしたが、色々悩んだ挙句、

代役は立てずに、連吟として謡だけで演じ、

倉本さんの舞姿を想い浮かべていただこうと決めました。


師の努力と功績を忘れず、恥ずかしく無い舞台を皆で目指すことが

何よりの供養かと存じます。

合掌

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