2010年5月アーカイブ

40 海人のお話

アマは「海人」「海女」「海士」と書きますが、

現在の宝生流では「海人」と書きます。

 

海人は能の中では「海辺で働く人」という意味で使われています。

 

汐汲み、汐焼き、漁師なども含めます。

勿論、海に潜る海女も。

この潜る海女を「かつぎの海人」と言います。

 

能「海人」では「かつぎの海人にて候」と名乗ります。

 

讃岐の志度の浦に住む海人は、藤原不比等(淡海)と契りを交わし、

1人の子を設け、淡海の真の狙いであった「龍宮へ取られた宝珠」を

取り返すことを依頼され、子どもを大臣の世継ぎにすることを条件に、

決死の海人働きをします。

 

お伽草子にもある「玉取り物語」です。

 

壮絶な玉取りを敢行し、

「五体も続かず朱になりたり」

となりますが、しっかりと自分の体内に玉を押し込めていました。

 

13回忌に追善供養にきた我が子(藤原房前の大臣)に、

自分が母親であることを告げた海人の亡霊は、

我が跡をしっかりと弔う様に頼み、海の中に消えます。

 

自分の母親が海人であったこと、また自分の為に壮絶な死を遂げたことを知り、

驚き、哀しみ、追善供養を行います。

 

母が龍女の姿で現れ、自らも経文を読んで成仏していきます。

 

女性は亡くなったあと、龍女となってから成仏するという考えに基づいた

演出です。

 

 

 

 

 

39 「海 人」

29日の土曜日には熱海MOA美術館能楽堂で

「海 人(あま)」を演じます。

 

4度目の演能になりますが、名曲であり、大変好きな演目でもあります。

母の愛、女性の強さ、愛情といったテーマなのですが、

そのことも勿論情愛あふれる作品として素晴らしく、

さらに「玉之段」と呼ばれる舞い処、謡い処があり、

本当に良い場面なのです。

 

実は、本年12月の第2回「満次郎の会」も

海人にしました!

 

ただし、「懐中之舞」という特殊演出つきですが・・・

 

普通バージョンとの比較も楽しんでいただけると思います。

 

最初に「能楽ミニ講座」として私が開設もさせていただきますので、

能と美術品、温泉、グルメ・・・と是非熱海へお出かけくださいませ!

 

「お知らせ」に番組案内しております。

 

38  「舎 利」

9日の「善知鳥」代勤は無事に済み、一安心致しました。

急な御案内にもかかわらず御高覧いただきました方には

心より感謝申し上げます。

 

12日は興福寺薪御能で「舎利」を勤めます。

 

はるか昔のこと・・・

足疾風という足の速い鬼が、釈迦の死後、その牙舎利(歯の骨)を盗み、

韋駄天によって取り返された、という伝説がありました。

 

京都の泉湧寺に、その牙舎利が安置されており、

修行中の僧(ワキ)が拝観していると、怪しげな男(前シテ)がいつの間にか近寄り、

ともに拝観している有様でしたが、突如舎利珠を奪って、天井を蹴破り虚空に消え去ります。

 

寺男(アイ)が伝説を思い出し、韋駄天に祈ると韋駄天が現れ、

足疾鬼を全宇宙までも追い詰め、ついには首根っこを抑えて再び舎利を取り返す・・・

という、痛快スペクタル偏です。

是非、遷都1300年で盛り上がる南都へお出掛けくださいませ!

 

詳しくはこちらをご覧下さい。

 

 

 

 

 

37  善知鳥

いよいよ明後日に迫って参りました、急遽代勤をいたします

「善知鳥(うとう)」のご紹介を・・・

 

富山県立山で諸国修行の僧(ワキ)は老人(前シテ、安方の霊)に声を掛けます。

 

老人「陸奥にお下りなさるなら、外の浜にお立ち寄りいただき、

   去年の秋に亡くなった猟師の家を訪ねて、その妻子にこの蓑と笠を手向けるように

   言伝していただけませんか?」

 

僧  「それは構わないが、いきなりそう言って訪ねても、

   信じるだろうか?」

 

「では確かな証拠に」と、最期まで着ていた衣の片袖を僧に渡します。

舞台上で着用している装束の片袖を引き抜く、という大変珍しい所作も見どころです。

老人は地獄におちた猟師安方の亡霊で、下っていく僧を涙ながらに見送ります。

立山の地獄の入り口まで覗きにきた僧に

伝言したのでしょう。

 

外の浜(青森市)でその妻子を訪ね、事の次第を伝え、

衣の片袖を合わせるとピッタリと合い、

やがて笠を手向けて弔いを始めます。

 

弔いによって妻子の元に現れた安方の霊は、

死んでからようやく親子の情と言うものが人間だけではない、

自分が殺し続けた鳥や獣、特に善知鳥は親子の情が深く、

愚かな事をし続けてしまった、と歎きます。

 

そして我が子の元へ走りよろうとすると、

自分の罪業により現れた雲に遮られ、近寄る事もかないません。

そして罪障懺悔に善知鳥を獲った様を再現します。

伝説として「親鳥が雛を呼ぶ『ウトウ』という声を真似ると、

雛が『ヤスカタ』とこたえるので、簡単に捕らえる事ができる」

という話が出てきます。

 

外の浜を治めた「善知鳥中納言藤原安方」に因んだ話でしょうか。

 

雛を捕らえると、親は空から血の涙を大量に流し、

その血に触れると命をも失う為、善知鳥を捕らえるときには

蓑と笠を着用するのだ、と伝説は続きます。

 

罪障懺悔では、実際にそのさまを表現します。

これも大きな見どころで、我々にとっては難所であります。

 

地獄では善知鳥が鉄のくちばし赤銅の爪を振りたて

安方を襲い、眼を掴み出し、さらにはタカと変化した善知鳥は

キジとなった安方をおそうという、凄惨な地獄の様を見せ、

やがて僧に回向を頼み消え失せます。

 

ポッドキャスト番外編

超大型連休の日本国でありますが、

例年よりも個人的に能繁期となっております・・・。

 

私をジャングルジムと間違っている御子様達(もちろん他所様の)、

早朝からビールとシュウマイの香りを楽しむお兄様たち、

高らかな笑い声とイビキの合唱団のお姉さま方・・・

 

すっかり「環境」に適応しつつ、旅衣は擦り切れております。

 

4月は、京都で代演の「船弁慶」、29日いかるがホールで新作「マクベス」、

5月は、9日代勤の「善知鳥」、12日興福寺薪御能「舎利」、29日MOA美術館定期能「海人」・・・

 

ひとつずつ、しっかり勤め上げるのは当然の役目ですが、体調管理も手を抜けません。

いつもならば今ごろまで苦しむ花粉症も、今年は感じないのが不思議で、有難いです。

 

それぞれご案内申し上げますので、宜しくお願いいたします。