255 突然倒れた巨木

新聞報道にもありましたので、ご存知の方もあるでしょう。

女流能楽師随一と言われた、倉本雅さんが3月24日未明に自宅で急逝なさいました。


直前までお弟子の稽古、全くお元気であり、突然のことでありました。

私も直ぐに神戸に駆けつけましたが、未だにピンと来ません。


今月には恒例の「梗風会」と言う、師の同門会があり、

毎年皆がお世話になる催しで、楽しみにしておりました。

来月には私の「満次郎の会」大阪公演にもご出演いただくことになっておりました。

まことに、残念で仕方ありません。


芸に厳しく、人に優しい、そんな方でした。

宝生の重厚な謡を正確に謡える、数少ない女流能楽師でした。

流儀内外にも認められていたのは、およそ彼女1人でありましょう。


10歳にして祖父辰巳孝一郎に師事し、翌年に能を舞い、人々を驚かせ、

先々々代宗家宝生九郎師・亡父辰巳孝の厳しい稽古に鍛えられ、

ついには皆の目標となられました。

晩年は膝を傷められ、座す事思うに任せないこともあり、

「早く辞めたい」とおっしゃるのを、なんとか説得して無理を強いてきたことを

申し訳なく思っております。


落胆この上なき関係各位でありましたが、

それぞれが、これでは故人に面目ないと思い直し、

梗風会もなんとか恩返し、供養のために私どもが補佐して、開催することとなりました。


また、私の会には仕舞「網之段」でしたが、色々悩んだ挙句、

代役は立てずに、連吟として謡だけで演じ、

倉本さんの舞姿を想い浮かべていただこうと決めました。


師の努力と功績を忘れず、恥ずかしく無い舞台を皆で目指すことが

何よりの供養かと存じます。

合掌

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