6 第1回「満次郎の会」の楽しみ方 舞台編④

「邯鄲」続きでございます・・・

 

一畳台の狭い舞台を落っこちそうになりながら舞っていますが、

やがて本舞台に舞う場所が移ります。これで一畳台は再び寝床の設定に戻ります。

そのうちに、走馬灯のように春夏秋冬が過ぎ、万木千草も1日に花開き、

やがて数多くの家来達も消え去り、夢は覚めるのでした。

 

夢から覚める場面は、走りこんでジャンプして一気に床に臥すという

アクロバティックな所作になります。

 

「粟のご飯が出来たからおきなされ」と女将から起こされて起き上がった盧生は

しばらく呆然としています。

50年の栄耀栄華を思い、膝を抱えて「つらつら人間の有様」を考え、

何事も「一炊の夢」と悟り、「悟り」を啓かせてくれた邯鄲の枕を「げに有難や」とおしいただき、

もはや羊飛山に行く意味もあるまいと故郷へ帰っていきます。

 

今回の「傘の出」の演出では、最後に傘をさして帰る演出もありますので、

今回はその演出でやらせていただきます。

通常「能」では身に備えるのが当たり前なものであっても、

平気で帰り(終曲後)には持参しなかったりします。

これから狩場にいくのに弓矢を持参しない曽我兄弟であったり・・・

 

しかし「傘の出」の演出は、わざとそのリアルな観を持ち、夢現から、完全に現実に戻ったことを

絶妙に演出していると思います。

 

まさに意気揚々と明るい希望を持ち、人生を歩んでいこうという姿であり、

ですからこの曲を「旗揚げ公演」で演じたかった訳でもあります・・・

 

これで一応舞台編は終了いたします。

最後に「お願い」でありますが、今回私の自由な会ということでして・・・

『舞台から誰も居なくなるまでは拍手はご遠慮いただいきたい』

ということです。

 

現代では、まるで法律のように、演者が幕に入ろうとする寸前に一人ずつ

暖かい拍手をして下さいますが、余韻をお楽しみいただくには

まさに「興を覚ます」ことに なりかねません。

 

次回からはロビーに移動しましょう。