「邯鄲」続きでございます・・・
一畳台の狭い舞台を落っこちそうになりながら舞っていますが、
やがて本舞台に舞う場所が移ります。これで一畳台は再び寝床の設定に戻ります。
そのうちに、走馬灯のように春夏秋冬が過ぎ、万木千草も1日に花開き、
やがて数多くの家来達も消え去り、夢は覚めるのでした。
夢から覚める場面は、走りこんでジャンプして一気に床に臥すという
アクロバティックな所作になります。
「粟のご飯が出来たからおきなされ」と女将から起こされて起き上がった盧生は
しばらく呆然としています。
50年の栄耀栄華を思い、膝を抱えて「つらつら人間の有様」を考え、
何事も「一炊の夢」と悟り、「悟り」を啓かせてくれた邯鄲の枕を「げに有難や」とおしいただき、
もはや羊飛山に行く意味もあるまいと故郷へ帰っていきます。
今回の「傘の出」の演出では、最後に傘をさして帰る演出もありますので、
今回はその演出でやらせていただきます。
通常「能」では身に備えるのが当たり前なものであっても、
平気で帰り(終曲後)には持参しなかったりします。
これから狩場にいくのに弓矢を持参しない曽我兄弟であったり・・・
しかし「傘の出」の演出は、わざとそのリアルな観を持ち、夢現から、完全に現実に戻ったことを
絶妙に演出していると思います。
まさに意気揚々と明るい希望を持ち、人生を歩んでいこうという姿であり、
ですからこの曲を「旗揚げ公演」で演じたかった訳でもあります・・・
これで一応舞台編は終了いたします。
最後に「お願い」でありますが、今回私の自由な会ということでして・・・
『舞台から誰も居なくなるまでは拍手はご遠慮いただいきたい』
ということです。
現代では、まるで法律のように、演者が幕に入ろうとする寸前に一人ずつ
暖かい拍手をして下さいますが、余韻をお楽しみいただくには
まさに「興を覚ます」ことに なりかねません。
次回からはロビーに移動しましょう。