27  改めねばならないこと 崩してはならないこと 

伝統芸能の世界では、「伝承」と「スキルアップ」が

最大事と思います。

 

「改めねばならないこと」は、つまり考え方についてを思っています。

 

能楽の催しの形態やコンセプトは色々あって良いでしょう。

とことん、道を極めることを追求し、それを承知でいらっしゃってくださる方に

観ていただく催し。

普及目的に初心者向けの演目と解説やワークショップを伴った催し。

また、テーマやコンセプトを持った催し。

 

それぞれが大事で、必要な催しであるのは、

もはや現代では、どなたも認識されていることでしょう。

 

さらに、能楽堂へ来てくださる方を増やすためには、

能楽堂での催しの内容を充実するだけでは、

鑑賞人口はそれほど増えていかない という事実を

われわれは思い知る必要があります。

 

われわれの「伝承者」としての意識がどれほどのものか、

老・壮・青の年代を問わず、心配になることがあります。

伝承者の使命として、「守って滅びる」などという発言は

先人にたいしても世の中に対しても、許せないものと考えます。

 

決して「崩してはならないこと」は「正しい能楽の伝承」であり、

それには師匠の下での根本的な修行は勿論、精神的な教育も含まれるでしょう。

しかし、それを拡める手立てについては、様々に柔軟に可能性をさぐり、

展開していく姿勢を持ち続けなければ、いけません。

これは一般社会で言う、生き延びるための企業努力であり、

さりながら、営業や広報・企画・制作の専門家がいる能楽界の組織は

10%以下と思われます。

 

才能ある能楽師が「片手間」に企画・運営をしてなんとかやってこれている情勢は、

そろそろ成り立たなくなってくると思います。

 

    《 つづく 》