伝統芸能の世界では、「伝承」と「スキルアップ」が
最大事と思います。
「改めねばならないこと」は、つまり考え方についてを思っています。
能楽の催しの形態やコンセプトは色々あって良いでしょう。
とことん、道を極めることを追求し、それを承知でいらっしゃってくださる方に
観ていただく催し。
普及目的に初心者向けの演目と解説やワークショップを伴った催し。
また、テーマやコンセプトを持った催し。
それぞれが大事で、必要な催しであるのは、
もはや現代では、どなたも認識されていることでしょう。
さらに、能楽堂へ来てくださる方を増やすためには、
能楽堂での催しの内容を充実するだけでは、
鑑賞人口はそれほど増えていかない という事実を
われわれは思い知る必要があります。
われわれの「伝承者」としての意識がどれほどのものか、
老・壮・青の年代を問わず、心配になることがあります。
伝承者の使命として、「守って滅びる」などという発言は
先人にたいしても世の中に対しても、許せないものと考えます。
決して「崩してはならないこと」は「正しい能楽の伝承」であり、
それには師匠の下での根本的な修行は勿論、精神的な教育も含まれるでしょう。
しかし、それを拡める手立てについては、様々に柔軟に可能性をさぐり、
展開していく姿勢を持ち続けなければ、いけません。
これは一般社会で言う、生き延びるための企業努力であり、
さりながら、営業や広報・企画・制作の専門家がいる能楽界の組織は
10%以下と思われます。
才能ある能楽師が「片手間」に企画・運営をしてなんとかやってこれている情勢は、
そろそろ成り立たなくなってくると思います。
《 つづく 》