アマは「海人」「海女」「海士」と書きますが、
現在の宝生流では「海人」と書きます。
海人は能の中では「海辺で働く人」という意味で使われています。
汐汲み、汐焼き、漁師なども含めます。
勿論、海に潜る海女も。
この潜る海女を「かつぎの海人」と言います。
能「海人」では「かつぎの海人にて候」と名乗ります。
讃岐の志度の浦に住む海人は、藤原不比等(淡海)と契りを交わし、
1人の子を設け、淡海の真の狙いであった「龍宮へ取られた宝珠」を
取り返すことを依頼され、子どもを大臣の世継ぎにすることを条件に、
決死の海人働きをします。
お伽草子にもある「玉取り物語」です。
壮絶な玉取りを敢行し、
「五体も続かず朱になりたり」
となりますが、しっかりと自分の体内に玉を押し込めていました。
13回忌に追善供養にきた我が子(藤原房前の大臣)に、
自分が母親であることを告げた海人の亡霊は、
我が跡をしっかりと弔う様に頼み、海の中に消えます。
自分の母親が海人であったこと、また自分の為に壮絶な死を遂げたことを知り、
驚き、哀しみ、追善供養を行います。
母が龍女の姿で現れ、自らも経文を読んで成仏していきます。
女性は亡くなったあと、龍女となってから成仏するという考えに基づいた
演出です。