40 海人のお話

アマは「海人」「海女」「海士」と書きますが、

現在の宝生流では「海人」と書きます。

 

海人は能の中では「海辺で働く人」という意味で使われています。

 

汐汲み、汐焼き、漁師なども含めます。

勿論、海に潜る海女も。

この潜る海女を「かつぎの海人」と言います。

 

能「海人」では「かつぎの海人にて候」と名乗ります。

 

讃岐の志度の浦に住む海人は、藤原不比等(淡海)と契りを交わし、

1人の子を設け、淡海の真の狙いであった「龍宮へ取られた宝珠」を

取り返すことを依頼され、子どもを大臣の世継ぎにすることを条件に、

決死の海人働きをします。

 

お伽草子にもある「玉取り物語」です。

 

壮絶な玉取りを敢行し、

「五体も続かず朱になりたり」

となりますが、しっかりと自分の体内に玉を押し込めていました。

 

13回忌に追善供養にきた我が子(藤原房前の大臣)に、

自分が母親であることを告げた海人の亡霊は、

我が跡をしっかりと弔う様に頼み、海の中に消えます。

 

自分の母親が海人であったこと、また自分の為に壮絶な死を遂げたことを知り、

驚き、哀しみ、追善供養を行います。

 

母が龍女の姿で現れ、自らも経文を読んで成仏していきます。

 

女性は亡くなったあと、龍女となってから成仏するという考えに基づいた

演出です。