125  第3回「満次郎の会」お楽しみ満載 その5 昼の部

台風15号の被害にあわれた方には御見舞申し上げます。

列島縦断で爪痕を残し、報道もありましたが東京での大風の被害は大変でした。

私も、足止めの名古屋で難民一歩手前になり、それなりに苦労しましたが、

東京では「普通」にそんな状況だったようです。

 

本当にいい加減に鎮まって欲しいものです。

 

さて、肝心の内容のお楽しみ、昼の部です。

昼の部はことごとく「もとより鬼」であるものどもの曲。

 

「おはなし」は30年来の友人、東洋研究家のアレックス・カー氏です。

彼は子供時代から日本に在住し、やがて日本文化の魅力をよく知り、

海外の人々に向けて「書」「茶」「花」「能」などの体験プログラムや、

昔ながらの日本建築、街並みなどの保存も手掛け、

全国で講演、また「犬と鬼」など出版も多数あります。

 

今回は事前に彼のお宅で対談も行い、そのダイジェストは

当日パンフレットにも掲載いたします。

彼のお話と共にお楽しみ下さい。

 

仕舞、「大江山」は酒天童子が酒宴をして山伏に変装した源頼光を

もてなし、やがて夜の臥戸(寝室)に入るまで。

隠れ家を知られ、気弱になる酒天童子を「誰にも秘密」と慰めておいて、

寝入り中に騙まし討ちにする頼光。

「情けなしとよ!」と憤る童子に「鬼にそんなこと言う権利なし」と切り捨てる。

 

「土 蜘」は、その頼光が原因不明の病に倒れて、

明日をも知れぬ虫の息の折に、枕元に忍び寄る怪僧(土蜘蛛の化身)。

枕元の名刀「膝丸」で斬り伏せられ、怪僧は蜘蛛の糸を噴き出して失せる場面。

その後、血痕をたどった独武者達に退治される運命であります。

 

「山 姥」は、山に棲む鬼女の山姥が山めぐりを再現する場面。

「百万山姥」と言われる遊芸人、山姥をモデルとした遊芸でスターになったが、

真の山姥を見たこともなく理解もしていないので、恨みを述べます。

クセと呼ばれる部分ですが、山姥のクセは「難クセ」と称される3曲の内で、

舞も謡も相当にレベルの高い仕舞です。

 

狂言「鬼の継子」、本物の鬼が出てくるスタイルは狂言では珍しい方です。

幼子を背負う人間の母親と3人連れ立つ羽目になりますが・・・。

人間にはない鬼の心理も見所です。

 

一調「歌 占」、突然死したあと、3日後に蘇生し、その間に地獄を見てきたという

伊勢二見浦の神職、渡会(わたらえ)。

歌占のお陰で生き別れた我が子と再開、考案した地獄のクセ舞いを舞います。

 

演奏部分は、クセ舞いをして神掛かりになり、

神気が抜け、我が子と連れ立って伊勢に帰る部分。

鬼は登場しませんが、鬼の住処「地獄」がテーマです。

 

そして能「紅葉狩」。

通常シテに伴うツレの上﨟達は3人ですが、このたびは古式にあった5人ツレで演じます。

いっそう、華やかな紅葉狩の宴席となるでしょう。

戸隠山で狩をする将軍、平惟茂(これもち)が幕を回し、屏風を立て

酒宴中の高貴な上蘢達の宴に通りかかりました。

下馬して通り過ぎようとする惟茂の袖を引き留める妖艶な女。

その美貌と酒に溺れて眠りこけます。

それを見定めて鬼の本性を現わして激しく舞う(急の舞)と山中へ消え去ります。

 

夢中に神の使いが現れ、眠り込む愚かさを咎めますが、

結局は退治を命じ、神剣を授けます。

 

身の丈1丈(約4メートル)の鬼と激しく闘いますが、ついには退治します。

 

世にまつろわぬもの達、「鬼」は

権力者から見ると「成敗」の対象であります。

 

そして能では主役はヒーローではなく、

退治される側です。

 

鬼どもの悲哀を匂わすではありませんか?