141 「秘中の秘」笏之舞について ①

昨日は名古屋宝生会定式能で能「善知鳥」を勤めました。

 

お陰さまで無事に終了、本年の名古屋宝生会定式能も終了となりました。

来年もより充実をはかって、運営メンバー(ほぼ能楽師)も努力中です。

来年は1月22日(日)能「小袖曽我」内藤飛能「小鍛冶」白頭 玉井博祜ほか、

よろしくお願い申し上げます。

 

さて、迫ってまいりました宝生別会「融」笏之舞につき、

いろいろ御案内させて頂こうと思います。

 

この「笏之舞」の小書(特殊演出)は、

昭和39年の宝生別会で高橋進師(人間国宝)がなさって以来の演出です。

 

お恥ずかしい限りですが、この小書きが珍しく大事であることは

承知していたのですが、これほど大変なものとは

認識しておらず・・・。

 

しかしそれは大方の認識もそうであり、だから私のような若輩に

付いてしまったのですから・・・。

 

高橋進師の遺された資料を悉く拝見し、

太鼓金春宗家の伝書も拝見し解読し、

笏の作法は神道と宮中祭祀の方にも教わり、

笏も2本買い求め・・・

相当に研究もいたしましたが、調べるほどに大変になってきました。

 

金春惣右衛門家伝書によりますと、

江戸文化年間に宝生大夫弥五郎が惣右衛門家を訪ね、

久しく笏之舞が出ておらず、「翁」と同様とのみ口伝あるが、

如何なるものかと尋ねると、

惣右衛門(当時惣二郎)は扇で膝を打ち、実演してみせ、

大夫は「承知、安心した」と理解したとあります。

 

恐るべきやり取りであります。

相当に複雑な演奏であり、およそ1度切り聞いて安心するようなものでは

ございません。

ただただ敬服申し上げるばかりです。

 

その直後、大夫の子息が「御流儀に定める故」と

手附け(詳しい演奏書付)を所望し、これを取得します。

座付きという、「座」に所属する流儀で打合せされており、

宝生は笛は一噌、小鼓は幸清、大鼓は金春(ただし廃流になり葛野になる)、

太鼓は金春で決めごとがなされています。

 

今回は太鼓以外は座付きにあらず、それぞれ大変な状況下での

舞台となりました。

ただし、惣右衛門伝書には「宗家筋は流儀に関わらず」とあり、

偶然、今回の大家筋のメンバーで良かったなと・・・。

 

なるほどがってん 笏之舞