154 「翁」で始まるは恒例

1年の始まり、つまり初会(はつかい)正月宝生会月並能は

必ず「翁」からスタートです。

新年らしい「翁」は毎年ご覧になっている方も多いと存じます。

 

大昔は毎回翁に始まり、五番立てでしたが、

現在は新年最初、または舞台披き、或いは特別な意味のあるときに

「セレモニー」として勤めるものです。

 

今年は山内崇生氏が披き(初演)で勤めます。

精進潔斎の日々をおくっている事でしょう。

 

前夜子の刻より、別火(べっか)も行います。

食事や手火鉢(今はエアコンの時代でもとより使用しません)、風呂まで別火としました。

 

宮中祭祀と同様に、翁の演者全員が一つの棟に隔離されて行うのが本来でしたが、

今では翁、千歳、三番叟(三)、鼓頭取が各自行うくらいでしょうか・・・。

 

「殺生禁断」をメインとする仏式とは異なる、

「心気平安」を目的とする神式の精進潔斎です。

 

私も七日間一人で或る木造旅館に泊まり、

四足を食さず、身につけず、当日早朝一番風呂で清めて舞台を勤めました。

 

木造和式旅館に泊まるのは、

洋式ホテルに泊まると、ウール製などの「四足製品」を身につけるからです。

 

「四足食品」は乳製品も含みますので、牛乳やバターも禁です。

 

やりだすとキリがないのですが、気持ちの問題ですので、

可能な限りは行いたいものです。

 

楽屋には女性は入れません。

女性蔑視ではなく、心を平かにするためです。

勿論、見所には女性がいらっしゃるとも、舞台に出れば乱れないものです。

 

すべて、祈りを勤める代表者として、心の平安を保つためのものです。

己の為に祈るのではありません。

「天下泰平・国土安穏」の祈祷です。

三番叟は「五穀豊穣」です。

 

翁を勤める方には、是非ともそういった意味を大切にしていただきたいものです。

 

平成24年の宝生会月並能初会は、1月8日(日)正午幕開きです。

 

本年より、月並能も正午始り、これで月並・五雲会・別会・立春能・文月能とも

正午開始に統一です。

 

※恐縮ですが「神事」である翁は、開演中の出入りを御断りしていますので、

10分ほど前には着座していただき、御調べや切火(清めの火打ち)の音なども

お楽しみいただき、清々しい翁を御高覧賜りたく存じます。

 

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