242 満会 5 お楽しみ 1 「昼の部」

お寒くなりました。

さて、お楽しみのご案内その1、昼の部の御案内です。


今回初めて勤めさせていただく「翁付き」とは、

翁を演じて、そのまま次の演目が連続して演じられる形式のことで、

最も正式で、正月や上棟、落成のときなど、大事な時に厳粛に行われるものです。



まず、精進潔斎、別火(翁演者のみ同一火を使用する潔斎)した役者達が、

鏡の間にてお神酒・塩・洗米をいただき、お調べ(お囃子の始まりの儀式)をして

幕の前に立ち、切り火(火打石で浄める)で更に身を浄め、

神体である翁面を持つ「面箱持ち」を先頭に舞台へ出ます。

翁(辰巳満次郎)が謡始め、続いて延年を祈念する千歳(せんざい、山内崇生)が颯爽と舞い、

次に翁が舞台上で白い翁面を着けて神となり舞い、

「翁帰り」と呼ばれる囃子により幕へ入ります。


次に三番叟(野村萬斎)が五穀豊穣を祈念して、まず直面(ひためん、面を付けない)で

揉みの段という、種をまく舞を舞います。

そして今度は、後見座で黒い面を掛けて鈴を持ち、

鈴の段という、芽生え、成長を祈念する舞を舞います。


三番叟も幕へ入りますと、3人いるうちの小鼓2人(脇鼓の2人)が退出し、

囃子方の後方に居た地謡(コーラス)は、本来の地謡座へ移動し、

そのまま「高砂」が始まります。

ワキの神主友成が登場し、播州高砂の浦に到着すると、

松の木陰を掃き清める老夫婦(前シテ・ツレ)が現れます。

友成と老夫婦の対話が進み、相生の松の謂れ、夫婦が離れて住む意味などを語り、

松の目出度さ、奇特さを、秦の始皇帝のエピソードを交えて地謡がうたいあげ(クセ)、

やがて自分たちが神であることを告げ、

神体に会いたければ住吉へ来いと言って、海に消えていきます。

意気揚々と船に乗り神に会いにいく友成、「高砂や~」の部分ですが、

颯爽と住吉明神が登場し、天下泰平を誓い、神舞を舞います。


この3体のシテを全て勤めさせていただきます。

その間、2時間半ほど、お付き合い願いたく・・・。


また、翁は神事能として特別なもので御座います。

まことに恐れながら、翁が始まりますと途中入場をお断りさせていただいております。

5分前には御席にお付きになり、お心を鎮めていただき、

お調べの音、切り火の音をお聴きになり、

既に翁をその時よりお楽しみになられますこと、オススメ申し上げます。


近年では、翁のシテと高砂は別の役者が勤めるのですが、

祖父が本式に1人で勤めたことが有り、挑戦させていただきます。


能が出来る前からあった翁、能にして能にあらず、とも。

世阿弥たちが能役者として初めて勤めたと言われます。


伊勢・出雲遷宮、世阿弥生誕650年紀、当会5周年、満次郎斯道50年様々を寿ぎ、

更に、役者たちによる天下泰平・国土安穏・五穀豊穣を祈念する姿を

皆様に共有していただき、共に願っていただけば、この上なき幸甚に存じます。

mankai okina mono.jpg
            okina:akiko sato