258 「難 波」の面白さ

昨日は京都綾部で能「難波」を初演してまいりました。

この曲は、稀曲・難曲、出来れば勤めないで済めば・・・などと思うような曲で、

全くケシカラン心構えですが、主催者のご希望で選曲為された時には、

大変なことになった!とさえ考えました。


何しろ、130分の長大な曲、殆ど観た事もなく、関西宝生では少なくとも戦後には出ておらず、

しかし、勉強するうちに、大変良い曲で、面白さも多々あり、

長大なゆえに出ないというだけの事、所謂「悪尉楽」という、悪尉という

恐ろしい老人の面を掛けて「楽」という舞をゆったり舞う曲趣ですが、

宝生では明治初期に「難波」を残してこの悪尉楽物は皆、廃曲となりました。


つまり、難波のみ残すほどの、名曲であった訳です。

その意味もよく解りました。


シテの百済から来た王仁は、仁徳天皇が難波の皇子と言われ、

中々即位出来なかったときに

「難波津の さくやこの花冬ごもり 今は春辺と さくやこの花」

と、詠んだ人物。


冬を蕾で堪え、春一番に花を咲かせる梅の花に、皇子をたとえた歌。

ツレはコノハナサクヤで、後半は天女の舞を舞います。


さらに面白いのは、大蔵流狂言のみの演出になりますが、

中入りでカッコ台というカッコを取り付けた、雅楽での太鼓の作り物を

舞台上に持ち運び、笛を吹く真似をして舞う、という特殊な舞もあります。


中々ユニークで、しかしおそらく古曲であろう風情も感じられる名曲でした。

たいそう、疲れましたが・・・感謝。


さて、明日は豊田能楽堂で「俊寛」です。


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   松野 奏風 画   能 「難 波」