2010年6月アーカイブ

46 いのち

いつの間にか気が付いたら自分にも命がありますが、

こんな有難いことはありません。

 

いらない命など絶対に世には無い筈です。

生まれてきた目的が在る筈です。

生かされている間が使命なのでしょうか。

 

しかし突然奪われてしまうと、周りも本人も(たぶん)

たいそう驚き、哀しみ、戸惑います。

 

度重なる同年代の同志の訃報に接するのも修行でしょうか。

 

「お待ちしています!」という署名入りの招待状を開けたころに、

無常にも、その筆者は亡くなっていました。

同年で夏場に親睦をはかる「獅子の会」を・・・と計画していた矢先であり、

親子三代の獅子(石橋大獅子)を拝見する筈の日が葬儀になるとは残念の極み。

 

翌日には、祖父孝一郎からのお弟子であり宝生会専務理事も務めた高弟が

94歳の大往生を遂げられました。

子どもの内から、親子三代で大変お世話になりました。

 

それぞれ「天寿を全うされた」と思いたいです。

 

謹んで哀悼申し上げるとともに、いのちの尊さを噛み締め、

しっかりと生きていくことの大事さを痛感する次第です。

 

重い話が続きましたので、先日三島の稽古場前で撮った

カルガモ親子の写真を・・・

 

いのちは絶え間ないものですね。

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今から30年ほど前、若手の養成と発表の場であった「東京能楽養成会」が無くなり、

自分たちの勉強会をさせていただきたいと考え、

先々代宗家の宝生英雄(ふさお)先生にお願いして、

我々の年代で「宝生流勉強会」を作り、

非公開で勉強会をして宗家ほか先輩方に御高覧・御指導をいただいておりました。

 

我々が勉強会を卒業して、先代英照(ふさてる)宗家の時代になり、

その勉強会が公開されるようになったのを切っ掛けに、

全国版宝生流正規勉強会のご提案をして、

宝生流定期能の開催地、東京・名古屋・金沢・大阪で、

普及も兼ねた公開勉強会「青雲会」がスタートして6年目です。

 

7月5日に第6回大阪青雲会が開催されます。※お知らせをご覧ください 

 

 

44 不休で普及

24日に実家近くの小学校への派遣体験授業、

並行して実家の香里能楽堂で寝屋川市国際交流協会主催の

ワークショップと鑑賞、25日は金沢で「能って何?」のお手伝いをしました。

来月も御殿場のリゾートホテル、豊橋と続きます。

 

現代社会においては、能楽を始め、伝統芸能なるものは、絶え間なく普及しなければ

過去の遺産となってしまい、アーカイブのみとなり、ライヴで生き続けることはできません。

 

普及目的としての能との触れ合いが「鑑賞」中心であった時代が長く続きましたが、

「ワークショップ」という言葉を耳にするようになり、

「能楽師による実演解説付き鑑賞」が世に出だしたのは30年くらい前でした。

 

私の知る限りでは、シテ方よりも囃子方の能楽師が先陣をきっていましたし、

それも関西の若手が活発に行っていたようです。

私自身もお手伝いするようになり、勉強させていただきました。

 

営利抜きで、学校へ派遣授業にうかがったり、能楽堂にお越しいただいたり、

普及意識が芽生えて行く時代でした。

 

およそ能楽の正式な形を安価で提供すること、

体験・習得することなど無理・・・と

文科省も、ほとんどの能楽師も考えていた時代でもありました。

 

10年前、中学校での和楽器習得や国語教科書への能楽採用の復活などを受けて、

ゲリラ活動のようにそれぞれ活動しているメンバーを集めて

能楽協会内に「教育特別委員会」が組織され、その活動が

組織化されシステム化され、意見交換をし、広まっていきました。

 

いまや当たり前のようにシテ方もワークショップをするようになり、

参加型・体験型のものが人気もあり、有効であることが

教育現場でも、能楽師側でも浸透しつつあります。

 

お届けする我々が、しっかりと能の持つ力を承知して体現していなければ

中途半端なものになり、魅力など伝わらないでしょう。

逆にワークショップの経験を積むことによって

能の魅力を深く知る切っ掛けにもなりました。

 

ただし、ワークショップがひと時のお楽しみのみで終わるのであれば、

空しいことです。

 

さらなる鑑賞・体験・習得へとつながっていただくことを願い、

「能ガキ師」の「満談」を飛ばす日々であります。

 

43  有難や

おかげさまでなんとか本日月並能の「誓願寺」も勤めることができました。

長時間(本日は1時間50分)の能を御高覧賜りました方、有難うございました。

 

奈良や大阪、しかも昨日と連チャンでお越しくださった方、

初番から留めまで全てご覧いただいた方、

いつも応援してくださいます方、

舞台や楽屋で支えてくださる方・・・

皆々様に心より感謝申し上げます。

 

誓願寺の曲中には、「有難や」が何度も出てきますが、

何度出てきても感謝しきれないと実感しました。

 

今後もいろいろございますが、何卒よろしくお願い申し上げます。

 

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本日の留めの曲「大江山」について質問がありましたので、

御披露します。

 

御存じ「大江山の鬼退治」の話、能「大江山」ではシテの酒天童子が

ワキの源頼光一行に退治されます。

通常、退治されたり、討たれたり、その場に居てはならない役柄は

切戸から退出します。

しかし、この曲は幕から、しかもワキの後ろから退きます。

 

なぜか・・・?

 

答え:これは頼光が酒天童子の首を持ち凱旋帰京したことを表しているのです。

 

退治される鬼の曲、「紅葉狩」「土蜘」「大蛇」などは

皆切戸から退きますが、大江山のみこのような理由で幕へ退きます。

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ぎゅうぎゅう詰めの新幹線で帰京中であります。

 

本日は実家の香里能楽堂で開催の宝生流唯一の定期能公演「七宝会」で

「誓願寺」シテを勤めました。

昨日、東京・大阪(間で京都御所の近くでもう1つありましたが)で申合せすませ、

既に今朝は筋肉痛でありまして、やはりこの曲は難曲で大変な消耗です。

 

本日は朝から「養老」(シテ澤田宏司)の申合せもあり、つまり本番入れると

能2番謡い、誓願寺のシテも勤めた訳でありまして、

しかしこれは東京以外の弱小興業ではほぼ当たり前のことです。

 

1時間58分でございました。

 

これを見てウンザリしては困ります。

 

勤めるまでは、ひたすら逃げ出したいような感覚でおりましたが、

これほど短期で繰り返しているうちに、不思議とこの曲の良さ、面白さが解ってきました。

 

まったく未熟でお恥ずかしい話ですが・・・。

 

しかも明日はその誓願寺で和泉式部の供養が執り行われるとか、

ますます愛着が涌こうと云うものです。

 

甥の孝弥が数ヶ月前に誓願寺でお守りを買ってきてくれましたが、

「女人往生」「芸道成就」と書かれています。

 

和泉式部ばかりではなく、清少納言もここで往生しています。

 

いただいた札に「六十万人決定往生」とあることに不審し、「六十万人」が人数ではなく、

四句の文言の上の字であり、南無阿弥陀部を唱えれば皆成仏できると知る女。

彼女は和泉式部の化身でありました。

一遍上人に頼み、上人の手跡で六字の名号「南無阿弥陀仏」に額を打ちかえてもらい、

「あら有難の額の名号やな」と喜びをなす式部。

 

和歌の道に長けたものは、歌舞の菩薩の化現(けげん)であると言います。

 

式部は上人に六字の名号に書き換えることを「御本尊の御告げと思し召せ」と言います。

 

今日もそのつもりで勤めましたが、明日も和泉式部の供養の気持ちも備えたいと

思っております。

 

13日の宝生会月並能で「誓願寺」を勤めます。

実は今日決まったばかりですが・・・

前日12日、大阪の宝生流定期能「七宝会」でも

誓願寺があり、私は地頭でありましたが、シテが稽古のし過ぎであったか、

全治1カ月の肉離れになり私が代演することになりました。

 

数カ月も稽古を重ね、まことに残念で、またお客様にも申し訳ないことです。

 

東京で月並の誓願寺シテの申合せ(リハーサル)をすませ、

夕方大阪で誓願寺のシテ申合せをまたやり、翌日本番、

さらにその翌日本番・・・。

誓願寺は2時間近い上演時間で大役であります。

 

なんとか無事に首尾よく勤めたいと願っております。

多数応援に駆けつけていただけますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。

 

「七宝会」定期能

12日(土)13時半開演 

香里能楽堂 京阪電車「香里園」下車線路沿いに京都方面徒歩6分

072 831 0415

お問合せ:

七宝会 072 831 3206辰巳方

舞囃子「来 殿」佐藤 耕司

能   「養 老」澤田 宏司

狂言 「蚊相撲」善竹 忠重

能   「誓願寺」辰巳満次郎

料金:全自由 一般5,000円  学生2,000円

 

宝生会月並能

13日(日)13時開演 宝生能楽堂 水道橋駅下車

能  「橋弁慶」宝生 和英

能  「誓願寺」辰巳満次郎

能  「大江山」田崎 隆三

 

全指定席  正面8,000円  ワキ正面6,000円  中正面5,000円  学生3,000円

お問合せ  宝生会 03 3811 4843