2011年11月アーカイブ

広島への往復は飛行機でしたが、

行き帰りとも最新型787でした。                787 card.jpg       

 

「国産」「航空会社共同製作」という画期的な名目、

しかも様々な工夫やハイテク、

リラクゼーションを追求した機種で、驚きました。

 

 

 

日本の底力をいかんなく発揮した飛行機です。in 787.jpg

 

いくつかの企業が集合し、

それぞれの専門分野で、それぞれのパーツを

最高の技術で作っていることを

各席に設営されたモニターでの番組サービスで知りました。

天井は高く、窓も大きく、LED照明の優しさ、美しさは

目を見張りました。

 

それぞれの部署で最高の仕事をする・・・ まさしく我々の目標と重なります。

 

我々は「ひよこ」の内から自分の役割をしっかり叩き込まれ、

いつの日か舞台で皆がいきなり演じても揃う、力を習合できるために・・・・

という修行を淡々と続けて行きます。

 

教える、伝える側はもっと大変でしょう。

 

宝生別会、融笏之舞はお陰さまで、なんとか無事に終了いたしました。

別会でシテを、しかも大役を頂戴したことは、

この上ない喜びでございました。

 

写真・映像・音源として残りました。

それは大変貴重なことであり、良いことなのですが、

それだけでは伝わらないこともあるでしょう。

 

しっかりと書き留めたいと存じます。

 

公益財団法人ひろしん文化財団が主催する、

ひろしま平和能楽祭は今年22回目でした。

 

五流輪番で勤めますので、自身は5回目の出演、

今回は「春日龍神」を勤めました。

宗家筋が毎年出勤、和英宗家は「殺生石」白頭でした。

 

入場無料、公募ですが、今回は6000通の御申込があったとか。

会場のアステールプラザ中ホールは、可動式で能舞台に変形します。

500人定員で、能楽堂並みのキャパシティです。

 

20年以上も続けてくださる主催者には大変感謝し、

興味を示してくださる大勢の方々も有難く、

どうかいつまでも続いてほしいものであります。

 

空港行きのバスセンターへの道のり中、hiroshima 2.jpg

爆心地付近を通り、久しぶりにドームを間近に見て、 

胸の詰まる思いです。

 

戦争を体験した方も少なくなり始めています。

父を始め、よく体験談を聞いたものです。

 

初めて広島を訪れた出演者もあります。

 

皆で掌を合わせました。

鎮魂と祈念。

 

平和でありますように・・・

笏は「神具」として市販されています。

寸法はほぼ統一されており、形は丸みの強いもの、角ばったもの

少しずつ違うこともあるようです。

 

自身での稽古にも必要なので、

私は国産の櫟で作られた神道儀礼用のものを2本購入いたしました。

正目と木目です。

正目は神前で使うに相応しいようです。

木目は御好みもあるようですが、巷ではやや高価とか。

 

材質は櫟が1番ですが、屋久杉などを好む方もいらっしゃいます。

 

寸法は30センチほどです。

しかし、本来は持ち主の肘から手先までだったようです。

宝生の江戸期より残る笏は45センチでした。

昔の貴族であり、左大臣であり、権勢を笏寸で示すこともあったことから、

丁度良さそうな長さであります。

 

私の肘から手先より少しだけ短いですが、

これ以上長くすると懐中できなくなりますので、

忠実に寸法を測って特注製作させました。

 

神道儀礼では笏は必ず胸に平行ですが、

貴族の持ち方は少し前に倒すと考えています。

聖徳太子を始め、さまざまな肖像画や御尊影がそうだからです。

 

しかしながら三つ拍子のときには、きっちり構えたいものです。

 

宝生弥五郎が文化年間に復活させた笏之舞、

その時に相手をした笛の一噌又六郎宗家の「秘中の秘考」という伝書にも

さまざま詳しく書かれています。

 

今回、詳しく書付を遺すのは勿論ですが、初めて映像・音声も残る訳です。

なにより、ご覧になる方々の目にも・・・。

 

 

 

 

 

 

能における笏之舞は、古くは金春流のようです。

観世・金剛にはありません。

ただし、金春は笏を持ったまま「急ノ舞」を舞いますので

身体能力を要求される、激しい舞と思われます。

 

喜多流の笏之舞は宝生と同じと言われますが、

それは演奏形態がほぼ同じだけで、

舞い方はかなり異なっています。

 

調べるうちに、「笏之舞」は宝生が本流と解りました。

 

前回①でも書きましたように、「翁」と同じなのは

宝生だけです。

翁の時に、大小前(大鼓・小鼓の直ぐ前)から角(角の柱近く)、ワキ座前と

三角に移動し、笏を構えて「天地人」の三つ拍子を踏みしめる型があり、

懐中之手という特殊な囃子で笏を懐中し、扇で舞い始めます。

 

この間、大変にややこしい「手(特殊演奏)」が続き、

難儀ではありますが、大変面白いものです。

 

宝生流は特殊演出の数が少ないほうですが、

どれも難易度が高いといわれます。

なぜ、笏之舞が宝生本流になったのか、今のところは不明です。

ただし、「安宅」延年ノ舞も宝生が本流であり、

昔より祭祀系のものに特別な関わりがあるのかも知れません。

 

宮中雅楽の「笏之舞」から影響を受けていると考えるのが自然でありましょう。

これにつき、調査中です。

 

ー つづく -

 

昨日は名古屋宝生会定式能で能「善知鳥」を勤めました。

 

お陰さまで無事に終了、本年の名古屋宝生会定式能も終了となりました。

来年もより充実をはかって、運営メンバー(ほぼ能楽師)も努力中です。

来年は1月22日(日)能「小袖曽我」内藤飛能「小鍛冶」白頭 玉井博祜ほか、

よろしくお願い申し上げます。

 

さて、迫ってまいりました宝生別会「融」笏之舞につき、

いろいろ御案内させて頂こうと思います。

 

この「笏之舞」の小書(特殊演出)は、

昭和39年の宝生別会で高橋進師(人間国宝)がなさって以来の演出です。

 

お恥ずかしい限りですが、この小書きが珍しく大事であることは

承知していたのですが、これほど大変なものとは

認識しておらず・・・。

 

しかしそれは大方の認識もそうであり、だから私のような若輩に

付いてしまったのですから・・・。

 

高橋進師の遺された資料を悉く拝見し、

太鼓金春宗家の伝書も拝見し解読し、

笏の作法は神道と宮中祭祀の方にも教わり、

笏も2本買い求め・・・

相当に研究もいたしましたが、調べるほどに大変になってきました。

 

金春惣右衛門家伝書によりますと、

江戸文化年間に宝生大夫弥五郎が惣右衛門家を訪ね、

久しく笏之舞が出ておらず、「翁」と同様とのみ口伝あるが、

如何なるものかと尋ねると、

惣右衛門(当時惣二郎)は扇で膝を打ち、実演してみせ、

大夫は「承知、安心した」と理解したとあります。

 

恐るべきやり取りであります。

相当に複雑な演奏であり、およそ1度切り聞いて安心するようなものでは

ございません。

ただただ敬服申し上げるばかりです。

 

その直後、大夫の子息が「御流儀に定める故」と

手附け(詳しい演奏書付)を所望し、これを取得します。

座付きという、「座」に所属する流儀で打合せされており、

宝生は笛は一噌、小鼓は幸清、大鼓は金春(ただし廃流になり葛野になる)、

太鼓は金春で決めごとがなされています。

 

今回は太鼓以外は座付きにあらず、それぞれ大変な状況下での

舞台となりました。

ただし、惣右衛門伝書には「宗家筋は流儀に関わらず」とあり、

偶然、今回の大家筋のメンバーで良かったなと・・・。

 

なるほどがってん 笏之舞 

お陰さまで30周年記念大会は、無事に盛会に終了いたしました。

アマチュアの発表会なのに、8割超しの見所で有難いことでした。

能「羽衣」「巴」「安宅」ほか、総じて良い出来栄えで嬉しいことでした。

 

支えて頂いた皆さまに、深く感謝申し上げる次第でございます。

 

翌日は6時の新幹線で大阪行きのほか、毎日猛烈な日々を送っております。

昨日も駒込小学校能楽体験出張、文化庁打合せ、厚木稽古、大阪稽古と4か所。

本日は移動中、紅葉狩の方に埋もれて、京都亀岡で稽古。

明日も4か所・・・

 

19日土曜日は五雲会です。「呉服(くれは)」「忠信」「巻絹」「通小町」

 

20日(日)は名古屋宝生会で「善知鳥」を勤めます。

 

23日(祭)は堺能楽堂で舞囃子「敦盛」

 

26日(土)は広島平和能で「春日龍神」、

そして

27日(日)は宝生別会(特別公演)で「融」の秘中演出「笏之舞」です。

相当に困難な演出で手こずりましたが、

準っ申合せも済ませ、かなり研究しましたので、なんとか勤められそうです。

 

 

 

 

11月5日(土)6日(日)と、宝生能楽堂にて

私のアマチュアお弟子の会「あまねく会」の30周年記念大会が開催されます。

 

両日とも朝9時半から17時半まで、多彩な出し物で賑やかに

開催させていただきます。

 

初日は開演少し前に番外で女流の番外仕舞4番、

途中に息子の舞囃子「養老」

留めに私の舞囃子「田村」がございます。

 

能は「羽衣」「巴」です。

 

2日目は開演前に番外で

舞囃子「小袖曽我」和久荘太郎・辰巳大二郎と

一調「笠之段」辰巳満次郎がございます。

 

三島・沼津・名古屋・豊橋・関西から参加の出演ほか、

能「安宅」もございます。

 

勿論、入場無料でございますので、是非お出かけ下さいませ。

 

本日は朝10時より、京都金剛能楽堂に於いて、

第26回国民文化祭「能楽の祭典」の「学生能」がありました。

 

昨日も京都観世会館で大学生による観世流能「土蜘蛛」と大蔵流狂言「仁王」が

ありましたが、

本日は宝生流能「嵐山」と金剛流能「舎利」でした。

 

我が宝生流は、前シテ前ツレは京都大学、後シテ京都女子大学、

木守・勝手は同志社大学、地謡は混成・・・と

私どもも混じりながら、それぞれ学生諸君はシッカリと好演し、

とても良かったと思います。

 

金剛さんも、囃子方・間狂言に至り学生OBが勤め、

大変立派でした。

 

京都ならではの素晴らしい試みが大成功したと思います。

 

この様子はユーストリームで同時配信され、

3月いっぱいまで視聴可能です。

 

能楽の祭典 学生能映像はこちらから

 

11月2日には、京都の「向島(むかいじま)」にある、

京都文教大学で公開講座「クルヒの美学」と題して、

能に於ける「クルヒ」についてのお話と実演をさせていただきました。

 

同学で講座をさせていただくのは2回目ですが、

人間学研究所所長の秋田巌教授からの御依頼です。

 

臨床心理の御専門であることから、

「クルヒ」をテーマに、「執着」によるクルヒについて、

「執着」が人を「オニ」にしたこと、

それらの「美」や「哀れ」などなど、

能に於ける精神や体現について、講義をさせていただきました。

 

kurui (2).jpg

 

 

 

お陰さまで、11月1日の七宝会普及公演は

無事に終了させていただきました。

まことに有難うございました。

 

平日にも関わらず、昼夜とも大勢のお客様に御高覧賜り、

「鬼鎮魂大阪版」もご好評を頂戴しました。

 

萬斎氏との対談につづき、

「女郎花」「大江山」「葵上」の「鬼系」仕舞、

狂言「隠狸」、能「紅葉狩」でした。

 

今回は満次郎の会と、ひと工夫いたし、

前シテは着流し唐織姿の美女で勤めました。

 

舞い手にとっては大変リスクを伴う出で立ちですが、

やってみたいバージョンでもありました。

 

後シテは、恐ろしげでも、あっと言う間に、またまた退治されてしまい、

残念なことでしたが「決まり」ですから仕方ありませんね・・・

 

関西唯一の宝生流定期能「七宝会」は12月3日土曜日にも

ございますので、是非お出かけ下さいませ。