2016年4月アーカイブ

「無明怨炎」は熊野寿哉氏の装花「蛇炎」に始まり満席のお客様をお迎えし、

雨風という予報をなんとか凌いで午後からは晴れて開演、

道成寺 小野俊成院主さまによる縁起絵解きから、

宗家の仕舞「玉之段」、生田流箏曲「新娘道成寺」は山路みほ様と三絃は菊央雄司さま。

能は鐘釣から、お客様が息を飲まれるのが感じられました。

緊迫した空気が張り詰め、それは緊張と期待によるものでしょうか、

舞台も見所も酸欠状態と言っても過言ではありませんでした。


私も舞台に出て直ぐにその空気を感じ、余計に重圧となり己との格闘が始まりました。

次第の「作りし罪も消えぬべし」と謡うときには既に手の甲に汗が伝ってきました・・・


突如、25年前を思い出しました。

あれから能は200回以上は舞っているでしょう。

そのおかげで精神面では余裕がありましたが、体力面では限界点を見た気がします。

初演なら倒れていたかも知れません。


それなりに身体も鍛えていましたが、更に必要です。


源次郎師との乱拍子は初演以来ですが、2人で合わせ、申し合わせをして本番が一番

気が張り充実したものと成ったのは幸せな事です。

大倉流の大鼓相手は初めて、東京でも滅多にありません。過去1度くらいかと。

山本哲也さんでしたが、お互い良い経験ができて喜んだ次第です。


ワキも2度目の茂十郎師、やはりドッシリと風格、位があり、

有難い事でした。


関西で宝生の道成寺は残念ながら珍しく、私が生まれてからは7人しかおりません。

そのうち3人は父兄私です。


出さなければ、シテ方にも三役にも伝わりません。

そういった意味では意義が深いものとなったと思います。


道成寺が鎮魂、などという事を考える余裕を持ち、能としての在り方を探りつつ

舞うことが出来たのは嬉しく有難い経験でした。


能楽堂が一体となって道成寺の舞台を創り上げたこと、凄い事でした。


早朝から北陸線が止まり、お客様にも出演者にも大変な思いで駆けつけてくださった方もあります。

心より、全ての皆様に感謝申し上げます。


11月の東京満会「無明怨炎2」も頑張ります!!

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お蔭様で早くに完売となった道成寺スペシャル大阪版、

お知らせにありますように当日券が僅かに出ることになりました。

当日11時会場で発売いたします。


さて、迫ってまいりました「道成寺」です。


自分で決めた企画ながら、ようやく重圧が圧し掛かって参りました。

心身ともに相当ハードであり、若いころのようにも行かないと思いますが、

今までのものを活かして、それなりのものを出せるか、

正しく己への試練、挑戦です。


先週には絵解きの事で最終打ち合わせに道成寺に参りました。

ちょうど花盛りを過ぎ、シテの次第の謡、「花の他には松ばかり」のごとし。

帰りがけには夕刻、急の舞後の「入相の鐘に花ぞ散りける」のごとし。


ぞっとしたものと、哀れさを感じました。

道成寺は、鎮魂の能であります。

披き(初演)時には、そんなことを考えたこともありません、

ひたすら無事に終わることだけを考え、3か月前から膝前十字靭帯部分断裂を

克服するためにジム通いを続けました。


宝生流では最も多く道成寺を勤めた(8回)と言われる亡父も元気でしたから、

厳しく深く教わったのですが、無事にやることで精一杯。


何年も経ってから、だんだんと分かってきました。

そして25年ぶりの3回目の道成寺。

嬉しくも怖ろしくも、挑戦させていただきます。


満会はただストイックに能を感じていただくことはしません。

色々今回も趣向が御座います。

常連アーティストの熊野寿哉氏による装花。

その表現をお楽しみください。


道成寺で説かれる「道成寺縁起」を能舞台で絵説いていただく

これほど素晴らしい解説、教えはないでしょう。


箏曲「新娘道成寺」、能の発展系のもの、時代の移り変わり、

表現の違いはあれどテーマは変わりません。


そして、いつものように私からの、お楽しみお土産もご用意しております。



道成寺の石段、安珍も清姫も、白拍子花子も

登ったのでしょうか・・・


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