「無明怨炎」は熊野寿哉氏の装花「蛇炎」に始まり満席のお客様をお迎えし、
雨風という予報をなんとか凌いで午後からは晴れて開演、
道成寺 小野俊成院主さまによる縁起絵解きから、
宗家の仕舞「玉之段」、生田流箏曲「新娘道成寺」は山路みほ様と三絃は菊央雄司さま。
能は鐘釣から、お客様が息を飲まれるのが感じられました。
緊迫した空気が張り詰め、それは緊張と期待によるものでしょうか、
舞台も見所も酸欠状態と言っても過言ではありませんでした。
私も舞台に出て直ぐにその空気を感じ、余計に重圧となり己との格闘が始まりました。
次第の「作りし罪も消えぬべし」と謡うときには既に手の甲に汗が伝ってきました・・・
突如、25年前を思い出しました。
あれから能は200回以上は舞っているでしょう。
そのおかげで精神面では余裕がありましたが、体力面では限界点を見た気がします。
初演なら倒れていたかも知れません。
それなりに身体も鍛えていましたが、更に必要です。
源次郎師との乱拍子は初演以来ですが、2人で合わせ、申し合わせをして本番が一番
気が張り充実したものと成ったのは幸せな事です。
大倉流の大鼓相手は初めて、東京でも滅多にありません。過去1度くらいかと。
山本哲也さんでしたが、お互い良い経験ができて喜んだ次第です。
ワキも2度目の茂十郎師、やはりドッシリと風格、位があり、
有難い事でした。
関西で宝生の道成寺は残念ながら珍しく、私が生まれてからは7人しかおりません。
そのうち3人は父兄私です。
出さなければ、シテ方にも三役にも伝わりません。
そういった意味では意義が深いものとなったと思います。
道成寺が鎮魂、などという事を考える余裕を持ち、能としての在り方を探りつつ
舞うことが出来たのは嬉しく有難い経験でした。
能楽堂が一体となって道成寺の舞台を創り上げたこと、凄い事でした。
早朝から北陸線が止まり、お客様にも出演者にも大変な思いで駆けつけてくださった方もあります。
心より、全ての皆様に感謝申し上げます。
11月の東京満会「無明怨炎2」も頑張ります!!